読みました!ビターエンドロール
皆さんこんにちは。
Harukich@社会福祉士です。
先日、社会福祉士として気になる漫画が発売されました。
その名も、「ビターエンドロール」
読みました!
— はるきち@社会福祉士 (@SW52514741) 2021年9月25日
まだまだ病院にはお世話になる予定でない方にもお読みいただきたいです。
ぜひ色んな方に届きますように!! https://t.co/zI7GzBOHvG
今日は仕事が休みだったので本屋さん巡りをしていたところ、無事に見つけることができたので購入しました。
MSW=医療ソーシャルワーカーは、社会福祉士国家資格を持つ人にとって人気のある職種の一つです。この漫画は、そんなMSWとして働き始めた主人公が様々な患者と出会い対応していく様子を描いた作品です。
病院を題材にしたドラマや漫画作品は今までも多くあり、その大半は医師や看護師といった医療職が主人公でした。一方でソーシャルワーカーや社会福祉士を主人公としたメディアは少ないですが、最近だと女優の吉岡里帆さんが主演した「健康で文化的な最低限度の生活」が有名な作品かと思います(現在もビッグコミックスピリッツで連載中ですね)。
さて今回のブログは、漫画「ビターエンドロール」第1巻を読んだ感想をお伝えしながら、この漫画を通して広くMSWという職種の認知度が高まってほしい、という願いを込めて記事を書きました。極力ネタバレ要素は避けましたので、気になった方はぜひご購入いただくか、この文末に第一話試し読みサイトのリンクを貼っておりますので、アクセスしてみてください。
はじめに
私は以前、病院でMSWとして勤務したことがあります。
病院には全部で五種類の病床があるのですが(一般病床、精神病床、結核病床、感染症病床、療養病床)、私が働いていたのは療養病床です。わかりやすい言い方をすれば老人病院で、そのほかの病床での治療が終わったけどまだ医療的な処置が必要な方(維持透析や酸素療法、癌に対する麻薬を使った疼痛緩和、など)が入院し、大半の方が穏やかに最期を迎えていただくための場です。
一方今回の主人公が務めるのは一般病床を持つ総合病院で、簡単に言うと救急車の受け入れをしている病院です。漫画やドラマなど、病院を題材にした作品の多くが総合病院を舞台にしていますね。
したがって私自身は、総合病院でのMSWの働き方がわかりません。療養病床では入院患者のほとんどが高齢者で、疾患に対しても受容期にあり、DNARも了承を得ています。手術などの大掛かりな治療はしませんし、無保険の方もいません。
この漫画を読むことで多くの学びを得つつ、社会福祉士としての考え方を深められたら、と思います。
感想
あらすじを書こうかとも思いましたが、ネタバレするわけにはいきませんので早速感想に入りたいと思います。
①患者の気持ちに寄り添おうとしている
福祉従事者には、対象とする利用者に対し寄り添うことを求められています。では「寄り添うとは何か」というと一言では言い表せませんが、この漫画の主人公は患者一人一人に対して寄り添おうとしている様子がうまく描写されています。患者のありのままの姿を受け入れ、共に患者の将来のことを考え、患者の自己決定を支えております。
「ケースワークの原則」という本があります。
私は、社会福祉士等ソーシャルワーカーがバイブルにすべき本の一つだと認識しております。いわゆるバイステックの7原則というものですね。
こちらの記事では、7原則を簡潔に私の解釈でお伝えしています。
先述の感想の中には、その7原則の中の「受容」および「クライアントの自己決定」が含まれています。
ソーシャルワーカーにとって一回一回の面接時間は長く設けることはできませんが、その短い時間の中でこの7原則に沿って面接をしていることが、この漫画からはうかがい知れます。
②面接場面で泣くことは是か
「統制された情緒的関与」
という原則があります。この原則によると我々ソーシャルワーカーは、自分自身の感情を自覚しながら面接に挑む必要があります。この漫画では、主人公が面接場面において泣き感情をあらわにする場面が何度も見られます。しかしソーシャルワーカーは、一対一で挑む面接場面において、「泣く」という行為がクライアントに対してどのような影響を及ぼすかを考えながら面接をしなければなりません。その証拠にSV(スーパーバイザー)である先輩MSWも、主人公が泣いたときには咎めようとした様子が描かれていました。
まぁこの辺りは、今後の主人公の成長に期待、ということでしょうか。
ちなみにですが、泣くこと自体が駄目だとは思いません。私は面接場面で泣いたことはありませんが、感情が揺さぶられたことは何度もあります。泣く以外の手段を使い、自分の思いを伝えるようにしています。
読もう!ビターエンドロール
さて冒頭でお伝えしたように、ビターエンドロールは現在アフタヌーンにて連載中です。公式HPから第一話を試し読みできますので、気になった方はぜひご一読ください。
そしてこの漫画をきっかけに、多くの人がMSWという職種を知っていただけますように。
病院で働く人が、病気を治すだけでなくその後の生活を支える人もいる、ということが広く周知されますように。
老健の入所期間は3か月!?
皆さんこんにちは。
Harukich@社会福祉士です。
私は普段、介護老人保健施設(通称:ろうけん)で相談員をしております。
(↓相談員の仕事内容はコチラから)
老健への入所を考えたとき、「期間は3か月ですよ」というお話、聞いたことありませんか?実は老健という施設自体は3か月以上入所できる施設で、私が勤務している施設でも5年以上入所している方が何名もおります。
前回のブログでも簡単に触れましたが、今回のブログでは3か月という数字について深堀し、なぜ3か月という数字が独り歩きしているのかを考えていきたいと思います。
(↓ちなみに前回のブログはコチラです)
そもそも老健って?
老健は三種類ある介護保険施設のうちの一つで(残りは特別養護老人ホームと介護医療院です)、病院での治療は済んで退院できる状況になったけれど、自宅へ帰るにはまだなにがしかの準備(例えばリハビリや住宅改修など)が必要な方が一時的に入所をする施設です。病院に入院している方だけでなく自宅で生活している方も入所の対象となり、低下してしまったADLの改善目的や月単位の介護者のレスパイト(休憩)目的で利用していただくことがあります。レスパイトというと短期入所生活介護(ショートステイ)の利用が一般的ですが、介護保険の限度額を気にしなければならないショートステイとは異なり、10割負担になるリスクを気にすることなく一か月以上利用できること、利用期間中に重点的にリハビリを行うことができることが、老健を利用することのメリットです。
なお老健は介護保険施設ではありますが、常勤の医師がおり看護師は24時間常駐しているため、病院ほどではないですが医療面でのニーズに応えることも可能です。
どうして3か月?
老健で算定できる加算として、「短期集中リハビリテーション実施加算」というものがあります。
まず老健ですが、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)というリハビリテーションの専門職が配置されています。簡単にそれぞれの職種を紹介しますと、理学療法士は歩くことに関しての、作業療法士は腕を使うことに関しての、言語聴覚士は食べたり話したりすることに関しての専門職です。老健の生活においてはリハビリテーションの実施が可能で、原則的には1回20分程度の個別リハビリテーションを週1回と集団リハビリテーションを週1回(在宅強化型に至っては個別リハビリテーションを週3回)行うこと、とされています。
しかし入所当初3か月間に限っては、短期集中リハビリテーション実施加算というものの算定が可能で、1回20分以上のリハビリテーションを週3回以上実施できるようになるのです。※ただし加算なので、通常の入所費用に加えて1日あたり240単位:週5日行うと5000円ほど追加で支払う必要があります。
入所期間が4か月目に入ると通常のリハビリテーション回数しか提供できなくなるため、3か月かけて向上したADLが下がってしまう恐れがあります。
なので、「入所期間は3か月」を目安に、ということになるんです。
退所後はどうする?
老健は、退所してしまうと二度と利用できない、という施設ではありません。ADLの低下によるリハビリテーションが再び必要となった時や主介護者のレスパイトが必要になった時には、再入所を検討すると良いでしょう。
ただし注意しなければならないのは、退所から再入所までの期間が短いと短期集中リハビリテーションが実施できない可能性があるのです。短期集中リハビリテーション実施加算の算定要件には、「過去3か月間に老健に入所していないこと」という条文が含まれているからです。
なお老健には、短期入所療養介護というショートステイのサービスを提供している事業所も多くあります(空床利用という、入所のベッドが空いているときにしか使えない施設が多いかと思いますが)。老健でのショートステイであるため、短期入所生活介護(ショートステイ専門施設)には無い個別リハビリテーションの実施も可能となっております。
まとめ
老健で数多くリハビリテーションを行うには、入所から3か月間までです。経営的な観点から考えても、短期集中リハビリテーションの算定期間終了後に在宅復帰し、再度算定できるようになる3か月が経過してから再入所する、という入退所を繰り返すことは、施設にとってもとてもありがたいお話です。
3か月という数字がどうしても独り歩きしてしまいますが、3か月の中身をじっくり考えること、3か月が経過した後の生活の様子を想像しながら老健への入所を考えると、より濃い3か月間が遅れるかもしれませんね。
ただし3か月という数字は絶対ではないので、入所を検討する高齢者やご家族は必要以上に囚われる必要はありません。
願わくば皆さんが入所を検討する老健の相談員が、3か月という数字だけでなく本人やご家族の背景も含めて入所期間を考えられる人物でありますように…
在宅復帰について考える②
皆さんこんにちは。
Harukich@社会福祉士です。
さて前回のブログでは、介護報酬という売り上げの面から在宅復帰について考えました。
今回は、あくまで支援相談員の視点ではありますが、実際の入所生活から在宅復帰について考えてみます。
入所期間は3か月?
まず最初にぶち当たる壁は、この3か月という数字ではないでしょうか。
老健への入所を考えたときに、「入所期間は3か月です。3か月過ぎたら自宅へ帰ってもらうか、次の施設へ行ってもらいますので入所期間中に次の場所を考えておいてください」というお話をされたこと、ありませんか?
まず前提として、老健は入所期限はありません。「大腿骨骨折後は90日」とか「脳梗塞後は150日」とか…回復期リハビリテーション病棟ではないので、明確な期限があるわけではありませんし、急性期病棟のように入所期間が長引くほど報酬単価が下がる、というわけでもありません。ではなぜ3か月なのか。
「短期集中リハビリテーション実施加算」
という言葉、聞いたことありませんか?老健では、入所日から3か月以内であれば週3日以上、1日あたり20分以上の個別リハビリテーションを受けることができます。しかしこの加算、入所後3か月以内しか算定できませんので、入所日から3か月経過してしまいますとリハビリテーションを受ける回数が週2日まで減ってしまう可能性があります。
リハビリテーションの実施回数が減ってしまう=入所日から3か月が過ぎてしまうとADLが下がってしまう可能性が高い。だから、「入所期間は3か月」という話が出てくるのです。
入所前後訪問指導
老健では、新規で入所した要介護者の退所後に住む自宅を入所前30日あるいは入所後7日以内に訪問し、住居環境を確認・指導することを必要とされています(退所を目的としてケアプランを立案することで、加算の算定要件にもなります)。また、在宅復帰・在宅療養支援等指標の項目にもあるので施設としては是が非でも訪問したいです。
私が訪問した時には、本人が使うであろう寝室やトイレ、玄関等の写真を撮り、どこに段差があるのか、住宅改修が必要そうな個所はあるのか、といったところをご家族とともに検討し、施設へ戻ってから書面にまとめます。そしてリハ専門職や介護員と情報を共有し、「家に入るには〇cmの段差があるから、上り下りできるようリハビリしてね」「廊下幅が狭いから、小さいシルバーカーで歩けるようになるといいかも」といった話し合い:ショートカンファレンスを行います。
サービス担当者会議
医師や看護師といった医療職や介護員、管理栄養士、リハ専門職、相談員、そして本人とご家族が参加し、入所後の生活についてケアプランを作成するための会議を行います。家に帰るためにはどんなことが必要か、目標設定をする場ですね。
様々な関係者が集まる場で在宅復帰するためには施設でどんな生活を送ればよいか話し合うことができる、大切な会議となっています(現在は感染症対策の観点からご家族の参加は難しい場合が多いですが)。
入所中の生活
入所中は、必要な介護サービスやリハビリを受けながら、自身のできる範囲で自立した生活を送ってもらいます。私としては適宜本人のもとを訪問し、また色んな職種に話を聞きながら現状の確認をします。
面会に来たご家族に話しかけては、目標と現状のギャップを伝えたうえで「さてどうしましょうか?」といった投げかけをします。ご家族がギャップの部分を介護してくれれば問題はないですが…仕事の都合で一人になってしまうこともあるので、デイサービスなど必要そうなサービスを紹介することもあります。当然、ご家族が介護できるように介護技術の指導も行います。
また、「入退所前連携加算」といって在宅復帰後に担当するケアマネジャーに対し診療状況等を書面で情報提供し、在宅生活へスムーズに移行ができるよう連携を取っています。
退所前訪問指導
退所日前30日以内に退所後に生活する居宅を訪問し、退所後に必要なサービス等の調整を行います。在宅復帰・在宅療養支援等指標の項目の一つですね。この訪問時に私が心がけていることは、
①本人と一緒に自宅へ外出する
②施設のリハ専門職にも出席をしてもらう
③居宅ケアマネジャーやデイサービスの職員など、在宅復帰後のチームにも参加してもらう
です。退所前カンファレンスと称しても良いかもしれません。
肝心なのは、在宅復帰後の生活なわけですから。再び自宅で、かつ長く自宅での生活が送れるよう、指導を行っております。
なお退所前に訪問を行わなかった場合は退所後30日に以内に生活している自宅を訪問し、現在受けているサービスが妥当か、ご家族の介護方法は問題ないか、指導しております。またこの訪問をすることで、在宅復帰・在宅療養支援等指標の退所前後訪問指導の算定要件を満たすようにしています。
退所
以上のような経過を経て、無事退所日を迎えることとなります。そして施設は、退所後より30日以内に居宅ケアマネジャーへ在宅復帰後の状況確認をし、今後も在宅生活が継続するかの確認をしております。
入所する前に比べ、ADLが向上している方もいれば残念ながら低下してしまった方もいるかと思いますが、一時的に入所することでご家族はレスパイトすることができますし、在宅で受けるサービスの洗い出しにもつながりますので、月単位の入所はとてもメリットがあると感じています。
ここから私個人の意見ですが、入所していた老健には通所リハビリテーションという通所サービスを提供している事業所が多いかと思いますが、デイサービスの行き先に困った場合はそちらを利用することをお勧めします。リハ専門職や支援相談員は入所部門と通所部門を兼務している施設もありますので、ADLが低下傾向にあるときやご家族に疲れが見えているときなどに再入所の提案を施設側からもすることができる、というメリットがあるからです。なお私は入所専属の支援相談員ですが、たびたびデイケアに顔を出して在宅復帰した利用者の様子を見るよう心がけております。
介護保険はうまく活用するサービスです。前回のブログでも書きましたが、少しでも長く在宅生活が続くよう、「老健への入所」という選択肢を持ってみてはいかがでしょうか。
在宅復帰について考える①
皆さんこんにちは。
Harukich@社会福祉士です。
私のブログ記事を読んでくださった方はたびたび目にしているかと思いますが、「在宅復帰」というキーワードについて、皆さんどう思いますか?
介護老人保健施設は、在宅復帰を目指している方の入所を受け入れ、入所者が可能な限り自立した日常生活を送ることがきるよう、リハビリテーションや必要な医療、介護などを提供します。
上記のように、厚生労働省は老健を在宅復帰のための施設と位置付けております。
ではなぜ、要介護高齢者が老健へ入所すると在宅復帰について考えなければならないのか。それは、在宅復帰をしている利用者が多い施設ほど、介護報酬を多くもらえるからなのです。
本日は「在宅復帰について考える①」として、売り上げの面を切り口に在宅復帰について考えてみました。
老健の介護報酬とは
まず老健の介護報酬は、下図のように全部で5段階に分かれています(従来型多床室の場合)。ちなみに単位は、円ではなく「単位」です。
要介護度が同じ高齢者へサービスを提供しても、その他型と超強化型とでは一日当たり100単位以上(1単位=約10円)売り上げが変わってきます。
ではそれぞれの型(類型と言います)でどこが異なるかというと、どれだけの利用者を在宅復帰させているか、ということになるのです。
評価の方法
老健の類型を決めるにあたっては、「在宅復帰・在宅療養支援等指標」という評価項目を活用します。
この指標をもとに、70点以上だと超強化型、60点以上だと在宅強化型、40点以上だと加算型、20点以上だと基本型、20点未満だとその他型に分類されます。ちなみに私が勤務する施設は基本型です。
上図からもわかるように、回転率と在宅復帰率の項目が占める割合は非常に大きく、「在宅復帰する方が多いほど得る報酬も多い」といわれる所以はここにあるのです。
とは言えこれだけだとピンとこないでしょうから、定員100名の老健で想定をし、ざっくりとどれだけの利用者数が必要か、みてみましょう。
①回転率
過去3か月間において、どれだけの利用者が入所しどれだけの利用者が退所したか、についての指標です。詳しい計算はさておき、ひと月平均合計20名の利用者が入退所すると20点、合計10名の利用者が入退所すると10点獲得できる項目です。
②在宅復帰率
過去6か月において、老健を退所した利用者のうち在宅で介護サービスを受けている方の割合についての指標です。施設で亡くなった方は含みません。過去6か月間において60名の方が退所しており、うち10名が施設で亡くなったとします。対象者は50名となるので、25名以上=50%以上となるので20点、15名以上=30%以上となるので10点獲得することができる項目です。
さて上記二項目を、ひと月に置き換えて考えてみます。
100名が定員の施設に対し、10名の新規入所者と10名の新規退所者がおります。新規退所者のうち亡くなった方は3名、2名は病院へ入院し、1名は特養へ転所。4名が在宅復帰しました。
新規入退所者20名で回転率は20点、在宅復帰率は4÷7=約57%で20点、となるわけです。
なお③の入所前後訪問指導割合と④の退所前後訪問指導割合は、ほぼ確実に各10点を取れる項目です。
まとめ
今回は、介護報酬という売り上げの面から在宅復帰について考えてみました。
単純計算ではありますが、同じ100名定員平均要介護度3の施設において、その他型と超強化型の売り上げ差はざっくり114万円(38単位×10円×30日×100名)異なります。
そして、100名定員の施設においては毎週1名が在宅復帰すれば、在宅強化型以上となることができます。ただしこれはあくまで施設側の都合であり、実際に在宅復帰した要介護者が自宅で生活できるかは、別問題となります(当然、在宅生活を継続できるか確認しなければなりません)。
とは言え、在宅強化型以上になれる施設はリハビリテーションの実施回数やリハ専門職の配置人数も充実しており、まさに在宅復帰のための中間施設といえるでしょう。
また、要介護度の重い方が多く入所することについても、指標上は高く評価されていることも、忘れてはなりません。
老健は、退所したら終わりではありません。在宅復帰後ADLが低下したら再入所する。再入所中に重点的にリハビリテーションを行うことでADLが改善され、再び在宅復帰ができる。ということを繰り返していく。老健は、少しでも長く家での生活が続けられるようにうまく利用する施設、と捉えて頂ければと思います。
誰がための支援か
皆さんこんにちは。
Harukichi@社会福祉士です。
私は、介護老人保健施設(通称:ろうけん)で支援相談員という高齢要介護者の入退所に関わる仕事をしています。
前回のブログで、簡単に私の仕事内容を紹介しました。
介護施設におけるクライアントは、高齢者本人ですよね。老健は医師をはじめ看護師、介護員、ケアマネジャー、理学療法士、作業療法士、管理栄養士、調理員…様々な職種が協働して本人のADLおよびQOLの向上を図り日々支援しております。
※集団生活にはなりますので、ある程度施設の日課やルールといった制限が生じるのも事実ですが…(職員が職員のしやすいように支援する、ということは論外です)
では今回の記事は、施設に入所している本人のことだけを考えて支援をしても良いのか、というお話です。
老健の役割と在宅復帰
老健は、中間施設です。基本的には、終の棲家ではありません。自宅にせよ老人ホームにせよ特養にせよ…次の場所へ移るために、一時的に生活する場です。特に、「入所者が在宅復帰する」ということに重きを置いており、国も在宅復帰する利用者が多い施設を評価し介護報酬も高く設定しております。
さてこの在宅復帰ですが、何も自宅へ帰ることだけを指しているわけではありません。退所して居宅サービスを受けることになった要介護者は皆さん在宅復帰したことになります。
ということは、例えばサービス付き高齢者向け住宅やグループホームへ入所することも、在宅復帰に該当します。
老健だと月々の費用が安く済んでいたのに、退所させられた挙句費用負担も増して…なんてこと、ありませんか?こういう理由だったんです。
とは言え、長期入所できるケースもあるのですが…長くなりそうなのでまたの機会にします。
支援の対象者は?
冒頭に述べたように、介護施設におけるクライアントは入所している高齢者です。老健での生活を送ってもらいながら、再び自宅での生活を送ることができるように支援をするのが、老健の役割であり老健を利用する目的です。
ある程度日課がありますので、生活のリズムを整えることができるでしょう。介護員や看護師がおりますので、ご自身でできない部分は手伝ってもらうことができます。リハビリを受けることができますので、低下してしまった運動機能も改善・向上が図れるでしょう。管理栄養士が献立を考えますので、栄養のバランスも整い食生活の改善がなされます。一方で食事を作ったり洗濯をしたりする機会は失われてしまいますので、家事能力は低下してしまうかもしれませんね。
また入所時には自宅の環境を確認しますので、どこにどんな段差があるのか、ベッドから降りるときはどっちを向くのか、など退所後の生活を想定してリハビリや生活を送ってもらうことができます。
様々な職種が、本人がもう一度自宅で生活するにはどんな支援が必要か考え実務にあたっています。
介護するのは誰か
さて問題点は、在宅復帰したときに実際に介護するのは誰なのか、ということです。
サ高住や有料老人ホームだと介護員ですが、自宅では?家族ですよね。
老健職員の業務の中には「退所支援」とう項目もあり、介護技術はもちろんのこと食事の内容や服薬の仕方などを指導することも含まれています。
誰がための支援か
ここで今回の記事のタイトルです。
ただ家に帰るだけで良いのか。その家での生活が長く続かなければ、長く続くように支援をすることが大切です。そのために、家族の介護力もアセスメントし、家族でもできる介護方法で老健での生活を送ってもらい、その内容を家族に伝える。家族で担えない部分は介護サービスで補完するよう居宅ケアマネ等介護事業所と連携する。これが老健における在宅復帰支援であり、それでこそ中間施設の役割を担えるのではないか、と思うのです。
そうすると必然的に、老健におけるクライアントは要介護高齢者本人だけでなく、その家族も合わせてクライアント、というわけになるのです。
本人だけを支援するのであれば、私たち支援相談員はいりません。家族と施設をつなぎ、施設内の各職種間をつなぐ。そして、在宅復帰後に利用する介護事業所ともつなげる。本人が少しでも長く自宅での生活を続けられるよう支援する。それこそが、支援相談員の醍醐味だと思うのです。
誰がための支援か。本人を含めた家族のために、支援をするのです。
相談員って何するの?
皆さまこんにちは。
Harukichi@社会福祉士です。
相談員って、どんな仕事をしているかご存じですか?
今回は、介護老人保健施設(通称:ろうけん)で相談員をしている私の業務内容をお伝えしたいと思います。
社会福祉士の資格取得を目指している方や、転職を検討している方など、老健での勤務を考えている方の参考になればと思っていますので、ぜひご一読ください。
老健ってどんなとこ?
介護老人保健施設(通称:ろうけん)は、介護保険を使って入所する、介護保険施設の一つです。
病院を退院可能になったけれどもすぐに自宅で生活するには不安な方や、自宅での生活が困難になった方が、再び自宅で生活するためにリハビリテーションを含めた様々な準備をするために一時的に入所する施設です。中間施設、なんて呼ばれたりもしています。
「入所期間は3か月」
なんて言っている施設もありますが、回復期リハビリテーション病院とは異なり明確な期限があるわけではありません。ただし施設によって入所期間に対する考え方は違いますし、3か月という数字にはそれなりの根拠がありますので、また後日記事にできたらと思います。
月々の費用面については本人の収入額や貯蓄額にもよりますが、応能負担ですのでお金があまりない方でも入所できます。また常勤の医師がおりますので、医療面でのフォローもそれなりに行えます。
相談員の仕事とは?
老健の相談員は、支援相談員という職名です。ちなみに特養の相談員は、生活相談員と言います。あくまで老健は通過施設なので、生活をする場ではない、ということでしょうか。利用者100名に対し一人必ず配置する必要があります。
実際の業務内容としては、
・入所中の利用者の相談
・入所を希望するご家族や本人との面談
・退所を希望する本人やご家族との面談
・入退所に伴う病院やケアマネといった外部との連絡調整
・病院受診のための病院との調整
・利用者の送迎
・クレーム対応 …などなど
と、多岐にわたります。
その中でも赤字にした内容はいわゆるベッドコントロールに関わる業務で、収益にも関係する、支援相談員の業務としてとても大きなウエイトを占めます。今の介護保険制度や報酬制度上、在宅復帰をしている利用者が多い施設ほど、国は評価し高い報酬を得ることができます。
老健における利用者の生活のゴールは、再び自宅で生活することです。したがって、相談員の仕事も利用者が入所したら終わり、ではありません。
入所前に本人やご家族のニーズを把握し一緒の目標を設定する→入所中はその目標に向かって生活を送れるよう施設内の多職種(看護師、介護員や理学療法士など)と連携・協働する→目標の達成度合いに応じて居宅のケアマネジャーと連携し、どのようなサービスが介入すれば自宅での生活がよりスムーズにいくか、カンファレンスをする→退所後にはその時点でのサービスが妥当か、よりよい生活のためには何が必要か指導する
というように、入所前から退所後までの高齢者の生活の旗振り役だと思ってもらえれば、と思います。
給料はどうなの?
給与面に関しては、正直勤務先によるとしか言えません。しかし経営母体が医療法人であることが多いため、それなりの水準であると思ってください。実際に私は田舎に住んでいる30代ですが、平均年収以上はもらっています。
証拠は…ある月の給与明細の一部をご覧ください。
また業務の性質上施設全体についての把握が必要であったり収支のキープレーヤーだったりしますので、将来的に事務長のポストが見えてくるなど、給与が高くなる可能性も秘めています。そういった野望を持っている方にも、ぜひ挑戦していただきたい仕事です。
長くなりましたが…
相談員は、直接的に利用者に対し何かができる職種ではありません。
ただし、地域で再び生活したいと考えている高齢者にとって重要な人物であることは間違いありません。
本人、ご家族、フォーマルインフォーマル含めた支援者…色んな方を当事者として巻き込みながら、地域包括ケアと本人のQOLの向上にむけて力を注ぐことができる、非常にやりがいのある仕事です。
今回の記事を読んで、一人でも仲間が増えてくれると嬉しいな、と思っています。
選ばれる介護施設とは ~相談員の立場から~
皆さんこんにちは。
Harukichi@社会福祉士です。
さて先日、こんなツイートをしました。
相談員は施設の顔!
— はるきち@社会福祉士 (@SW52514741) 2021年9月5日
介護施設を利用する時に、本人や家族が一番最初に会うのは相談員。
相談員が全てでは無いのは前提として、一番最初に会う相談員に違和感を覚えたら、その施設を利用することは止めたほうが良いです。
だから僕は、見た目の清潔感とファーストコンタクトにはとても気を使います。
「相談員は施設の顔」
この言葉だけ見ると、ちょっとインパクトが強いかな、と思いますが…なぜそのようなツイートに至ったのか、私の考えを今日は書いていこうかと思います。
介護施設の相談員は、(受付職員を除いて)今後入所を考えている高齢者のご家族が一番最初に会う施設の職員です。
想像してみてください。不安な気持ちで訪ねた介護施設。大事な家族の今後の生活を任せるに値するのか、短い時間で見極めなければならない。そう思っているときに現れたのがイケメンだったら、見惚れて話が入ってきませんよね?私だったら、有村架純さんが来てくれたら説明も聞かずに申込書に記入してしまいます!
…
……
………
という話ではなく、清潔感の無い方だったらどう思うでしょうか。シャツがしわだらけだったりだらしなく出ていたりしたら?口臭がきつかったら?ひげが伸びていたら?あげるとキリがなくなりそうですが。
整形しろ、ということではなく、見た目に気を遣え、ということです。
え?マスクしているからひげは見えないでしょ?という声が聞こえてきそうですが、関係ありません。ひげは出勤前に必ず剃れ、です。
アイロンをかける余裕がなければ、形態記憶のシャツを買うのです。ポロシャツなど施設の制服があるのであれば、正しく着ましょう。
そして一番最初の挨拶は、穏やかにかつはきはきと。
笑顔で目を合わせることができれば、なおよいかと思います。
だからマスク、と思っているあなた、関係ないですよ。口元を見せることはできなくでも、笑顔は作ることができます。目の様子でわかりますからね。
さて、ご存じでしょうか。メラビアンの法則。
ここでは詳しくは語りませんが、第一印象というのは初めて会った瞬間の3~5秒で決まるそうです。そのたった数秒で得られる情報は多くありません。だからこそ、上の図のような割合になるのでしょう。
また、第一印象が8割、なんて言葉もよく聞きますよね。
もしかしたら、ファーストコンタクトの時点で8割方、申し込むか申し込まないか、決まっているかもしれません。
そう考えると、いくら提供するサービスの内容が良くても、説明の仕方が上手でも、挽回するのは難しいと思いませんか。
だから、「相談員は施設の顔」なんです。
ちなみにですが、施設自体の見た目の清潔感も大切です。予定がない限り、私が一日の一番最初に行う業務は掃除です。施設内を歩いていてゴミに気づいたら、拾うことを心がけています。
昨日はこんなツイートもしました。
相談員は率先して環境整備をしよう。
— はるきち@社会福祉士 (@SW52514741) 2021年9月10日
雨が続いていたためか、落ち葉が多くなってきましたね。玄関先がキレイでない施設は、入所先としては選ばれにくいと思います。
今度、施設の選び方って内容でブログ書いてみよ。#相談員#社会福祉士
ちょっとタイトルは変わりましたが、関連付けて。