誰がための支援か

皆さんこんにちは。

Harukichi@社会福祉士です。

 

私は、介護老人保健施設(通称:ろうけん)で支援相談員という高齢要介護者の入退所に関わる仕事をしています。

前回のブログで、簡単に私の仕事内容を紹介しました。

 

harukichi-sw.hatenablog.com

 

介護施設におけるクライアントは、高齢者本人ですよね。老健は医師をはじめ看護師、介護員、ケアマネジャー、理学療法士作業療法士、管理栄養士、調理員…様々な職種が協働して本人のADLおよびQOLの向上を図り日々支援しております。

※集団生活にはなりますので、ある程度施設の日課やルールといった制限が生じるのも事実ですが…(職員が職員のしやすいように支援する、ということは論外です)

では今回の記事は、施設に入所している本人のことだけを考えて支援をしても良いのか、というお話です。

 

 

老健の役割と在宅復帰

老健は、中間施設です。基本的には、終の棲家ではありません。自宅にせよ老人ホームにせよ特養にせよ…次の場所へ移るために、一時的に生活する場です。特に、「入所者が在宅復帰する」ということに重きを置いており、国も在宅復帰する利用者が多い施設を評価し介護報酬も高く設定しております。

さてこの在宅復帰ですが、何も自宅へ帰ることだけを指しているわけではありません。退所して居宅サービスを受けることになった要介護者は皆さん在宅復帰したことになります。

ということは、例えばサービス付き高齢者向け住宅グループホームへ入所することも、在宅復帰に該当します。

老健だと月々の費用が安く済んでいたのに、退所させられた挙句費用負担も増して…なんてこと、ありませんか?こういう理由だったんです。

とは言え、長期入所できるケースもあるのですが…長くなりそうなのでまたの機会にします。

 

支援の対象者は?

冒頭に述べたように、介護施設におけるクライアントは入所している高齢者です。老健での生活を送ってもらいながら、再び自宅での生活を送ることができるように支援をするのが、老健の役割であり老健を利用する目的です。

ある程度日課がありますので、生活のリズムを整えることができるでしょう。介護員や看護師がおりますので、ご自身でできない部分は手伝ってもらうことができます。リハビリを受けることができますので、低下してしまった運動機能も改善・向上が図れるでしょう。管理栄養士が献立を考えますので、栄養のバランスも整い食生活の改善がなされます。一方で食事を作ったり洗濯をしたりする機会は失われてしまいますので、家事能力は低下してしまうかもしれませんね。

また入所時には自宅の環境を確認しますので、どこにどんな段差があるのか、ベッドから降りるときはどっちを向くのか、など退所後の生活を想定してリハビリや生活を送ってもらうことができます。

様々な職種が、本人がもう一度自宅で生活するにはどんな支援が必要か考え実務にあたっています。

 

介護するのは誰か

さて問題点は、在宅復帰したときに実際に介護するのは誰なのか、ということです。

サ高住や有料老人ホームだと介護員ですが、自宅では?家族ですよね。

老健職員の業務の中には「退所支援」とう項目もあり、介護技術はもちろんのこと食事の内容や服薬の仕方などを指導することも含まれています。

 

誰がための支援か

ここで今回の記事のタイトルです。

ただ家に帰るだけで良いのか。その家での生活が長く続かなければ、長く続くように支援をすることが大切です。そのために、家族の介護力もアセスメントし、家族でもできる介護方法で老健での生活を送ってもらい、その内容を家族に伝える。家族で担えない部分は介護サービスで補完するよう居宅ケアマネ等介護事業所と連携する。これが老健における在宅復帰支援であり、それでこそ中間施設の役割を担えるのではないか、と思うのです。

そうすると必然的に、老健におけるクライアントは要介護高齢者本人だけでなく、その家族も合わせてクライアント、というわけになるのです。

本人だけを支援するのであれば、私たち支援相談員はいりません。家族と施設をつなぎ、施設内の各職種間をつなぐ。そして、在宅復帰後に利用する介護事業所ともつなげる。本人が少しでも長く自宅での生活を続けられるよう支援する。それこそが、支援相談員の醍醐味だと思うのです。

 

誰がための支援か。本人を含めた家族のために、支援をするのです。