在宅復帰について考える②

皆さんこんにちは。

Harukich@社会福祉士です。

さて前回のブログでは、介護報酬という売り上げの面から在宅復帰について考えました。

harukichi-sw.hatenablog.com

今回は、あくまで支援相談員の視点ではありますが、実際の入所生活から在宅復帰について考えてみます。

 

 

入所期間は3か月?

まず最初にぶち当たる壁は、この3か月という数字ではないでしょうか。

老健への入所を考えたときに、「入所期間は3か月です。3か月過ぎたら自宅へ帰ってもらうか、次の施設へ行ってもらいますので入所期間中に次の場所を考えておいてください」というお話をされたこと、ありませんか?

まず前提として、老健は入所期限はありません。「大腿骨骨折後は90日」とか「脳梗塞後は150日」とか…回復期リハビリテーション病棟ではないので、明確な期限があるわけではありませんし、急性期病棟のように入所期間が長引くほど報酬単価が下がる、というわけでもありません。ではなぜ3か月なのか。

「短期集中リハビリテーション実施加算」

という言葉、聞いたことありませんか?老健では、入所日から3か月以内であれば週3日以上、1日あたり20分以上の個別リハビリテーションを受けることができます。しかしこの加算、入所後3か月以内しか算定できませんので、入所日から3か月経過してしまいますとリハビリテーションを受ける回数が週2日まで減ってしまう可能性があります。

リハビリテーションの実施回数が減ってしまう=入所日から3か月が過ぎてしまうとADLが下がってしまう可能性が高い。だから、「入所期間は3か月」という話が出てくるのです。

 

入所前後訪問指導

老健では、新規で入所した要介護者の退所後に住む自宅を入所前30日あるいは入所後7日以内に訪問し、住居環境を確認・指導することを必要とされています(退所を目的としてケアプランを立案することで、加算の算定要件にもなります)。また、在宅復帰・在宅療養支援等指標の項目にもあるので施設としては是が非でも訪問したいです。

私が訪問した時には、本人が使うであろう寝室やトイレ、玄関等の写真を撮り、どこに段差があるのか、住宅改修が必要そうな個所はあるのか、といったところをご家族とともに検討し、施設へ戻ってから書面にまとめます。そしてリハ専門職や介護員と情報を共有し、「家に入るには〇cmの段差があるから、上り下りできるようリハビリしてね」「廊下幅が狭いから、小さいシルバーカーで歩けるようになるといいかも」といった話し合い:ショートカンファレンスを行います。

 

サービス担当者会議

医師や看護師といった医療職や介護員、管理栄養士、リハ専門職、相談員、そして本人とご家族が参加し、入所後の生活についてケアプランを作成するための会議を行います。家に帰るためにはどんなことが必要か、目標設定をする場ですね。

様々な関係者が集まる場で在宅復帰するためには施設でどんな生活を送ればよいか話し合うことができる、大切な会議となっています(現在は感染症対策の観点からご家族の参加は難しい場合が多いですが)。

 

入所中の生活

入所中は、必要な介護サービスやリハビリを受けながら、自身のできる範囲で自立した生活を送ってもらいます。私としては適宜本人のもとを訪問し、また色んな職種に話を聞きながら現状の確認をします。

面会に来たご家族に話しかけては、目標と現状のギャップを伝えたうえで「さてどうしましょうか?」といった投げかけをします。ご家族がギャップの部分を介護してくれれば問題はないですが…仕事の都合で一人になってしまうこともあるので、デイサービスなど必要そうなサービスを紹介することもあります。当然、ご家族が介護できるように介護技術の指導も行います。

また、「入退所前連携加算」といって在宅復帰後に担当するケアマネジャーに対し診療状況等を書面で情報提供し、在宅生活へスムーズに移行ができるよう連携を取っています。

 

退所前訪問指導

退所日前30日以内に退所後に生活する居宅を訪問し、退所後に必要なサービス等の調整を行います。在宅復帰・在宅療養支援等指標の項目の一つですね。この訪問時に私が心がけていることは、

①本人と一緒に自宅へ外出する

②施設のリハ専門職にも出席をしてもらう

③居宅ケアマネジャーやデイサービスの職員など、在宅復帰後のチームにも参加してもらう

です。退所前カンファレンスと称しても良いかもしれません。

肝心なのは、在宅復帰後の生活なわけですから。再び自宅で、かつ長く自宅での生活が送れるよう、指導を行っております。

なお退所前に訪問を行わなかった場合は退所後30日に以内に生活している自宅を訪問し、現在受けているサービスが妥当か、ご家族の介護方法は問題ないか、指導しております。またこの訪問をすることで、在宅復帰・在宅療養支援等指標の退所前後訪問指導の算定要件を満たすようにしています。

 

退所

以上のような経過を経て、無事退所日を迎えることとなります。そして施設は、退所後より30日以内に居宅ケアマネジャーへ在宅復帰後の状況確認をし、今後も在宅生活が継続するかの確認をしております。

入所する前に比べ、ADLが向上している方もいれば残念ながら低下してしまった方もいるかと思いますが、一時的に入所することでご家族はレスパイトすることができますし、在宅で受けるサービスの洗い出しにもつながりますので、月単位の入所はとてもメリットがあると感じています。

ここから私個人の意見ですが、入所していた老健には通所リハビリテーションという通所サービスを提供している事業所が多いかと思いますが、デイサービスの行き先に困った場合はそちらを利用することをお勧めします。リハ専門職や支援相談員は入所部門と通所部門を兼務している施設もありますので、ADLが低下傾向にあるときやご家族に疲れが見えているときなどに再入所の提案を施設側からもすることができる、というメリットがあるからです。なお私は入所専属の支援相談員ですが、たびたびデイケアに顔を出して在宅復帰した利用者の様子を見るよう心がけております。

 

介護保険はうまく活用するサービスです。前回のブログでも書きましたが、少しでも長く在宅生活が続くよう、「老健への入所」という選択肢を持ってみてはいかがでしょうか。