入所費用が高くなった!?

皆さんこんにちは。

Harukich@社会福祉士です。

さて先日、twitterのタイムライン上でこんなツイートを見かけました。

 

「せっかく安い特養に預けているのに、月の費用が上がったじゃないか。お金がないから安い所へお願いしているのに。これでは意味がない。」

 

私が勤務する施設でも、確かに利用者負担額が増額した方がいます。

介護保険施設の入所費用には、一部応能負担が適用されています。要するに、

「年金受給額が少ない方は費用を減免するよ」

という制度-限度額適用認定証の制度-があるのです。

この制度は毎年8月1日が切り替えの時期なのですが、今年の8月1日から制度に一部変更がありました。預貯金額が相応にある方は、減額幅が減少してしまったor制度の適応外になってしまったのです。

 

 

・限度額適用認定証の制度とは

介護保険負担限度額認定証とは、介護保険施設に係る費用負担の一部が、減額される制度です。

介護保険施設に係る費用とは、介護保険施設サービス費の一部(多くの方は1割)、食費、居住費に加えて、おむつなど日用品を含んだ実費負担分です。一般の方は、これらの費用が合わさってだいたい10万円から15万円程度が月々の費用として支払っているかと思います(詳しい金額には地域差がございます)。

しかし一部の方はこれらの費用のうち、食費と居住費について減額制度を利用することができます。それが「限度額適用認定証の制度」です。

制度を利用できる方は、低所得の方のみです。

介護保険施設へ入所の相談に行ったとき、年金受給額を尋ねられたことはありませんか?もしかしたら「失礼なことを聞くな」と思った方もいるかもしれません。しかしこの年金受給額が、この制度を利用できるかどうかの判断基準となるのです。

正確には、住民税非課税世帯の方のみが利用できる制度です。

自営業をやっていた方などで収入は年金のみ、かつ国民年金しか受給していない方=年金受給額が概ね月65,000円以下の方は、この制度の対象となる、と考えても良いでしょう。

・どこの施設で使えるの?

先ほどからお伝えしているように、この制度が使える施設は介護保険施設ショートステイのみです。デイサービスやヘルパーといった居宅サービスや、有料老人ホーム、グループホームでは使えませんのでご注意ください。

介護保険施設とは

介護保健施設は全部で以下の3種類があります。

特別養護老人ホーム(通称:とくよう)

②介護老人保健施設(通称:ろうけん)

③介護医療院(通称:いりょういん)

利用するにあたってはそれぞれにメリットデメリットがあり、端的にお伝えすると

①特養は介護が必要な方にとっての終の棲家となる施設

老健はリハビリをして在宅復帰を目指す施設

③医療院は介護と医療の両方のニーズを持つ方が長期的に療養できる施設

となっております。

ちなみに老健はよく「3か月しか入所できないよ」という話を聞くかと思いますので、その根拠はこちらをご覧ください。

harukichi-sw.hatenablog.com

 

・どれくらい安くなるの?

限度額適用認定証には、生活保護世帯等が適用となる第一段階から、住民税課税世帯となる一般の方が適用となる第四段階までの全部で4つの段階があります。ここでは大雑把な金額のみお伝えしますが、多くの方が先ほどの金額から4万円ほど安くなる、と思っていただければと思います(詳しい説明は割愛します)。

しかしこの8月1日から、制度に一部変更がありました。従来の第三段階がさらに二段階分割されたのです。

 

・いくら高くなった?

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上図にあるように、この8月から負担限度額認定証の制度に「第3段階②」という項目が加わりました。どの段階に適用されるかは、年金収入額と預貯金額によります。

今年の7月まで第3段階だった方の中で、収入がある方は第3段階②に、預貯金がある方は第3段階②あるいは第4段階(一般の方)となったというわけです。

従来第3段階だった方が第3段階②の適用となった場合、1,360円-650円=710円/日となるので、710円×30日=21,300円/月高くなったのですね。一年に直すと、255,600円高くなった、ということとなります。

食費は施設ごとに設定が可能ですので、第3段階だった方が第4段階となった場合の差額はわかりません。かつ居住費も高くなりますので、年間で50万円ほど介護施設に支払う額が増えてしまうかもしれません。

したがって、冒頭のように

「せっかく安い特養に入れたのに」

という意見になるわけですね。

しかし厚生労働省から出ているリーフレットをご覧いただければと思いますが、月々の支払が増え預貯金額が減ってしまった結果、認定要件を満たすこととなれば再度申請したのち負担減額の対象となるのです。

・どうすべきか

介護保険施設の支払いは、応能負担です。預貯金がある=支払うことができる、と行政が判断しておりますので、支払っていただく以外の方法はありません。

ただし一つ方法があるとすれば、「世帯員の構成を見直す」ことを検討しても良いかもしれません。

・本人の年金等収入額はいくらか。

・預貯金は本人名義の物か。

預貯金を持っているご家族と同一世帯となっている場合は、お気を付けください。

・役所の窓口で申請を

介護保険負担限度額認定証の制度は、申請主義です。たとえ住民税非課税世帯であっても、申請しないことには制度の利用ができません。一度非該当となった後の預貯金が減り認定要件を満たすこととなった場合も、知らせてくれることは無いと思います。

また制度そのものが一年ごとの更新制となっておりますので、来年の8月からは再び第3段階①(従来の第3段階)の適用となる可能性もございます。

以上踏まえたうえで、今後の入所費用の支払いについて、考えて頂ければと思います。