在宅復帰について考える①

皆さんこんにちは。

Harukich@社会福祉士です。

私のブログ記事を読んでくださった方はたびたび目にしているかと思いますが、「在宅復帰」というキーワードについて、皆さんどう思いますか?

介護老人保健施設は、在宅復帰を目指している方の入所を受け入れ、入所者が可能な限り自立した日常生活を送ることがきるよう、リハビリテーションや必要な医療、介護などを提供します。

www.kaigokensaku.mhlw.go.jp

上記のように、厚生労働省老健を在宅復帰のための施設と位置付けております。

ではなぜ、要介護高齢者が老健へ入所すると在宅復帰について考えなければならないのか。それは、在宅復帰をしている利用者が多い施設ほど、介護報酬を多くもらえるからなのです。

本日は「在宅復帰について考える①」として、売り上げの面を切り口に在宅復帰について考えてみました。

老健の介護報酬とは

まず老健の介護報酬は、下図のように全部で5段階に分かれています(従来型多床室の場合)。ちなみに単位は、円ではなく「単位」です。

f:id:Harukichi_SW:20210919222530p:plain

要介護度が同じ高齢者へサービスを提供しても、その他型と超強化型とでは一日当たり100単位以上(1単位=約10円)売り上げが変わってきます。

ではそれぞれの型(類型と言います)でどこが異なるかというと、どれだけの利用者を在宅復帰させているか、ということになるのです。

 

評価の方法

老健の類型を決めるにあたっては、「在宅復帰・在宅療養支援等指標」という評価項目を活用します。

f:id:Harukichi_SW:20210919233848p:plain

引用元:厚生労働省HP「令和3年度介護報酬改定の主な事項について 30項」
引用元URL:https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000727135.pdf

この指標をもとに、70点以上だと超強化型、60点以上だと在宅強化型、40点以上だと加算型、20点以上だと基本型、20点未満だとその他型に分類されます。ちなみに私が勤務する施設は基本型です。

上図からもわかるように、回転率と在宅復帰率の項目が占める割合は非常に大きく、「在宅復帰する方が多いほど得る報酬も多い」といわれる所以はここにあるのです。

とは言えこれだけだとピンとこないでしょうから、定員100名の老健で想定をし、ざっくりとどれだけの利用者数が必要か、みてみましょう。

①回転率

過去3か月間において、どれだけの利用者が入所しどれだけの利用者が退所したか、についての指標です。詳しい計算はさておき、ひと月平均合計20名の利用者が入退所すると20点、合計10名の利用者が入退所すると10点獲得できる項目です。

②在宅復帰率

過去6か月において、老健を退所した利用者のうち在宅で介護サービスを受けている方の割合についての指標です。施設で亡くなった方は含みません。過去6か月間において60名の方が退所しており、うち10名が施設で亡くなったとします。対象者は50名となるので、25名以上=50%以上となるので20点、15名以上=30%以上となるので10点獲得することができる項目です。

 

さて上記二項目を、ひと月に置き換えて考えてみます。

100名が定員の施設に対し、10名の新規入所者と10名の新規退所者がおります。新規退所者のうち亡くなった方は3名、2名は病院へ入院し、1名は特養へ転所。4名が在宅復帰しました。

新規入退所者20名で回転率は20点、在宅復帰率は4÷7=約57%で20点、となるわけです。

 

なお③の入所前後訪問指導割合と④の退所前後訪問指導割合は、ほぼ確実に各10点を取れる項目です。

 

まとめ

今回は、介護報酬という売り上げの面から在宅復帰について考えてみました。

単純計算ではありますが、同じ100名定員平均要介護度3の施設において、その他型と超強化型の売り上げ差はざっくり114万円(38単位×10円×30日×100名)異なります。

そして、100名定員の施設においては毎週1名が在宅復帰すれば、在宅強化型以上となることができます。ただしこれはあくまで施設側の都合であり、実際に在宅復帰した要介護者が自宅で生活できるかは、別問題となります(当然、在宅生活を継続できるか確認しなければなりません)。

とは言え、在宅強化型以上になれる施設はリハビリテーションの実施回数やリハ専門職の配置人数も充実しており、まさに在宅復帰のための中間施設といえるでしょう。

また、要介護度の重い方が多く入所することについても、指標上は高く評価されていることも、忘れてはなりません。

 

老健は、退所したら終わりではありません。在宅復帰後ADLが低下したら再入所する。再入所中に重点的にリハビリテーションを行うことでADLが改善され、再び在宅復帰ができる。ということを繰り返していく。老健は、少しでも長く家での生活が続けられるようにうまく利用する施設、と捉えて頂ければと思います。